2025年06月27日
2025年06月27日
小林 まいこ
獣医師・動物ライター
「うちの子と、あと何年一緒にいられるのだろう?」そんな思いがふと心をよぎることはありませんか?
犬の寿命は人間よりもずっと短く、気づけば飼い主さんの年齢を追い越しているケースも少なくありません。だからこそ、今の暮らし方が本当に愛犬に適しているのか見直すことが大切です。
この記事では、犬種ごとの平均寿命や年齢の人間換算、健康寿命を延ばすための工夫などを、わかりやすく解説します。
一般社団法人ペットフード協会が公表する「2024年全国犬猫飼育実態調査」によると、2024年の調査では、ワンちゃん全体の平均寿命は14.9歳となっています。
2023年は14.62歳だったことから、年々ワンちゃんの平均寿命は伸び続けていることがわかります。
ワンちゃんの平均寿命が長くなっているのには、近年の医療進歩やフードの改善が理由と考えられます。
実際に動物病院の数は、年々増えてきています。病院数が増えることで、異変を見つけた際にすばやく病院で処置ができたり、セカンドオピニオンを受けやすくなったりしているといえるでしょう。
また、昔はワンちゃんに人間のご飯の残り物を与えることがありましたが、現在では栄養バランスのよいワンちゃん用のフードが多く販売されています。
フードの改善は愛犬の健康を維持するのに役立ち、平均寿命が延びていると考えられます。
ここからは、犬種や性別による平均寿命の違いについて見ていきましょう。
※参考:一般社団法人ペットフード協会「令和6年(2024年)全国犬猫飼育実態調査」
まずは、超小型犬・小型犬・中大型犬とサイズごとの寿命の違いを表で比較してみましょう。
体の大きさ | 平均寿命 |
---|---|
超小型犬 | 15.13歳 |
小型犬 | 14.78歳 |
中・大型犬 | 14.37歳 |
※参考:一般社団法人ペットフード協会「令和6年(2024年)全国犬猫飼育実態調査」
このデータから中・大型犬よりも超小型犬や小型犬のほうが平均寿命が長いことがわかります。中・大型犬のほうが寿命が短いのは、成長スピードが早いことが原因という説があります。
超小型犬や小型犬は、成犬になっても体重が10kg未満です。対して中・大型犬は体重が15kg以上に成長します。
短い期間で急激に成長する必要があるため、細胞分裂の回数が多くなり、小型犬よりも早く老化が進むと考えられています。
ワンちゃんの寿命に、オス・メスの性別による明確な差は基本的にないとされています。
ただし、避妊・去勢手術を行った場合は、寿命の延び方に差が出ることが研究でわかっています。
アメリカで行われた研究によると、去勢手術をしたオスは平均寿命が13.8%延びたのに対し、避妊手術を行ったメスは26.3%延びたという結果が出ました。
この結果から、避妊・去勢手術を行うことで、子宮蓄膿症や乳腺腫瘍、精巣腫瘍などの重大な病気を予防できることが、寿命を大きく延ばす要因になっていると考えられます。
※参考:「Reproductive Capability Is Associated with Lifespan and Cause of Death in Companion Dogs」
次に、アニコム ホールディングス株式会社が公表した「2024 家庭どうぶつ白書」をもとに、平均寿命が長い犬種と短い犬種をそれぞれ紹介します。
【平均寿命が長い犬種】
犬種 | 平均寿命(2022年) |
---|---|
トイ・プードル | 15.3歳 |
ミニチュア・ダックスフンド | 14.9歳 |
カニーヘン・ダックスフンド | 14.8歳 |
柴犬 | 14.7歳 |
パピオン | 14.5歳 |
【平均寿命が短い犬種】
犬種 | 平均寿命(2022年) |
---|---|
ブルドッグ | 8.7歳 |
バーニーズ・マウンテン・ドッグ | 8.8歳 |
ゴールデン・レトリーバー | 10.9歳 |
フレンチ・ブルドッグ | 11.1歳 |
シベリアンハスキー | 11.3歳 |
※参考:アニコム ホールディングス株式会社「2024 家庭どうぶつ白書」
平均寿命が長い犬種は、トイ・プードルやミニチュア・ダックスフンドなどの小型犬が多いという結果になりました。
一方、平均寿命が短い犬種は、バーニーズ・マウンテン・ドッグやゴールデン・レトリーバーなどの大型犬が多いことがわかります。
短頭種に分類されるブルドッグとフレンチ・ブルドッグは、遺伝的に特定の病気になりやすいことがわかっており、比較的寿命が短い傾向です。
一般的にミックス犬(雑種)は、病気になりにくく、寿命が長いと考えられています。しかし、ミックス犬の寿命は他の犬種と比較してもそれほど大きな違いはありません。
アニコム ホールディングス株式会社の「2024 家庭どうぶつ白書」では、10kg未満のミックス犬の平均寿命は14.7歳、10kg以上20kg未満のミックス犬は、13.6歳という結果が出ています。
小型犬の平均寿命が14.78歳、中・大型犬は14.37歳と考えると、ミックス犬の寿命は平均的といえるでしょう。
これは、遺伝性疾患のリスクは低くても、他の病気や事故に遭うリスクは他の犬と変わらないためと考えられます。
※参考:アニコム ホールディングス株式会社「2024 家庭どうぶつ白書」
ワンちゃんの寿命は、人間と比較するととても短いといえます。飼い主さんよりも早く年をとっていき、気づけば愛犬が飼い主さんの年齢を超えてしまっていたということもあるでしょう。
多くの飼い主さんは、「愛犬が人間の年齢では何歳なのだろう?」と気になっているのではないでしょうか。
ここでは、犬の年齢を人間に換算する方法と、その換算がなぜ重要なのかを詳しく見ていきます。
環境省が公表した「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」をもとに、小型犬・中型犬・大型犬の年齢を人間換算し、表にまとめました。
【小・中型犬】
小・中型犬 | 人間 |
---|---|
1歳 | 15歳 |
2歳 | 24歳 |
3歳 | 28歳 |
5歳 | 36歳 |
7歳 | 44歳 |
10歳 | 56歳 |
12歳 | 64歳 |
15歳 | 76歳 |
20歳 | 96歳 |
【大型犬】
大型犬 | 人間 |
---|---|
1歳 | 12歳 |
2歳 | 19歳 |
3歳 | 26歳 |
5歳 | 40歳 |
7歳 | 54歳 |
10歳 | 75歳 |
12歳 | 89歳 |
15歳 | 110歳 |
※参考:環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~」
小・中型犬は、「24+(愛犬の年齢-2)×4」で人間換算した年齢が求められます。大型犬は「12+(愛犬の年齢-1)×7」で求められるので、ぜひ愛犬の人間換算した年齢を計算してみてください。
愛犬の年齢を人間換算して考える理由は、愛犬の健康管理や生活環境の見直しに役立つからです。
ワンちゃんは人間よりも成長スピードが早く、小型犬と大型犬では年をとるペースにも差があります。
人間換算の年齢を知ることで、「そろそろシニア期かな」「今の食事で十分だろうか」など、ライフステージに合ったケアをしやすくなります。
また、年齢に応じた運動量や健康診断の頻度を考えるうえでも目安になり、病気の予防や早期発見にもつながります。愛犬の健康を守り、適切な接し方をするためにも、人間換算は大切な指標のひとつです。
中・高齢期の愛犬に見られる変化の一例は、以下のとおりです。
中・高齢期の愛犬と暮らす飼い主さんは、愛犬のちょっとした変化を見逃さないようにしましょう。
たとえば、寝ている時間が増えたり、食欲が低下したりするのは、老化ではなく、病気の兆候の可能性もあります。
愛犬に長生きしてもらいたい場合は、小さな変化に気づき、早めに対処することが大切です。
愛犬の平均寿命を知ったところで、「もっと愛犬の寿命を延ばしたい」と考えている飼い主さんは多いのではないでしょうか。
ここでは、健康寿命をのばすために、毎日の生活で実践できる6つのポイントを紹介します。
愛犬に健康で長生きしてもらうには、年齢や健康状態に合わせたフードを選ぶことが不可欠です。
子犬期には成長を支える高カロリー・高たんぱくのフードが必要です。成犬期は栄養バランスを重視し、過剰なエネルギー摂取を避けられるフードを選びましょう。
シニア期に入ると、代謝が落ちて肥満になりやすくなるため、低脂肪・低カロリーのフードや関節ケア・内臓サポート成分を含むシニア用フードに切り替えるのがおすすめです。
また、持病がある場合は獣医師と相談し、療法食を選ぶことも検討しましょう。とくにアレルギーを持っているワンちゃんは、アレルゲンとなる食材が入っていないフードかどうかの確認が重要です。
年齢だけでなく、体質や生活習慣に合わせたフードを選ぶと、健康寿命を延ばすことにつながります。
愛犬の健康維持には、犬種や年齢に応じた運動が欠かせません。
たとえば、ジャック・ラッセル・テリアやボーダー・コリーなどの運動量が多い犬種は、毎日1時間以上の散歩や遊びの時間を確保する必要があります。
一方で、チワワやシーズーなどの小型犬は、1回20分程度の散歩で十分なケースも少なくありません。
また、シニア犬は関節や筋力の衰えを考えて、負担の少ないゆっくりとした散歩を取り入れるとよいでしょう。無理な運動は体に負担をかけるため、愛犬の体調を見ながら運動量を調整してみてください。
愛犬の体調不良にいち早く気づくためにも、定期的に健康診断を受けることをおすすめします。
とくに、子犬やシニア犬は体力があまりなく、成犬よりも病気にかかりやすいといえます。健康診断を定期的に受けると、普段の生活では気づけなかった病気やケガの早期発見につながります。
また、愛犬に異常がなかった場合でも、定期的に通うことで、病院に慣れることができるのもメリットのひとつです。
成犬の場合は年に1回、シニア犬は年に2回健康診断を受けると安心です。
愛犬の健康を守るうえで、日常的なケアも非常に大切です。
とくに口腔ケアは重要です。口腔ケアをしていない場合は、歯周病や口臭の原因となり、重症化すれば心臓や腎臓など全身の健康にも影響を与えるため注意が必要です。
週に2~3回の歯磨きを習慣にしたり、歯磨きガムやデンタルケア用のサプリメントまたはおもちゃを活用したりして、口腔ケアを行いましょう。
また、ブラッシングは、皮膚トラブルの予防や抜け毛対策に効果的です。さらに、伸びすぎた爪は関節への負担にもなるため、月1回程度を目安に爪切りも欠かせません。
こうした日常ケアを丁寧に続けることが、愛犬の健康寿命を伸ばすことにつながります。
避妊・去勢手術は、犬の寿命を延ばす方法のひとつです。
発情によるストレスや、望まない妊娠を防ぐだけでなく、乳腺腫瘍・子宮蓄膿症・精巣腫瘍・前立腺肥大などの生殖器系疾患や、会陰ヘルニアや肛門周囲腺腫の予防にもつながります。
ただし、避妊・去勢手術には、メリットだけでなく以下のようなデメリットもあります。
避妊・去勢の時期や手術の有無は、動物病院でしっかり相談しましょう。
愛犬の健康寿命をのばすためには、以下のポイントに注意して快適な住環境を用意しましょう。
愛犬のために住環境を整えたいと考えている飼い主さんには、ペット共生型マンション「Dear WAN Court」がおすすめです。
Dear WAN Courtは、リビングの床と共用の廊下に滑りにくい床材を採用しています。ワンちゃんが走り回っても転倒しにくく、足腰の負担軽減にもつながります。
また、全住戸のリビングには、床暖房を設置しているのもポイントです。温風が吹き出すことがないため、抜け毛が舞い上がりにくく、冬でも快適に過ごせる環境が整っています。
Dear WAN Courtには、ほかにも愛犬のための設備が充実しています。気になった方は、ぜひ物件情報をチェックしてみてください。
ここまで、ワンちゃんの平均寿命について解説してきました。平均寿命は、あくまで寿命の目安です。そのため、ワンちゃんによっては、平均寿命を超えて長生きしているケースも多くあります。
ここからは、世界の長寿犬と日本の長寿犬を紹介します。
現在、世界最高齢の犬としてギネス認定されているのは、オーストラリアで暮らしていたオーストラリアン・キャトル・ドッグの「ブルーイー」です。
ブルーイーは、1910年に生まれ、1939年に亡くなっており、29歳5ヵ月生きたという記録を持っています。
以前はポルトガルの「ボビ」という犬が31歳165日で史上最高齢記録を更新し、話題となりましたが、その後ギネスワールドレコーズ社は年齢の証明が困難であるとして、この記録を取り消しています。
日本では、栃木県で暮らしていた雑種の「ぷースケ」が26歳9ヶ月まで生きて、世界最高齢の犬としてギネスブックに登録されていたことがあります。
ぷースケの年齢は、人間で換算すると約125歳以上。亡くなる前日まで朝と夕方に散歩に行き、ご飯もしっかり食べていたようです。
ほかにも、京都府で暮らしているミニチュア・ダックスフンドの「レオ」は、22歳40日で存命中の世界最高齢の犬としてギネス記録に認定されました。
多いときは、1日に3,4回外出していた日もあり、散歩に行くことが好きだったようです。
長生きのワンちゃんの暮らしぶりをみると、毎日しっかりと運動させて、寝たきりにならないようにすることが大切といえるでしょう。